These foolish things

音楽を中心に新しいもの、古いものをなどMy Favaritesを。時には映画やWho's Whoなども

映画「春との旅」

映画「春との旅」


ずっと気になっていましたが、ようやく見ることができました。圧倒されて筋道だった感想が書けそうにありません。


北国の寒村の掘立小屋で数十年鰊を待っていた老漁師の忠男(仲代達矢)は年老いて体が不自由になり、小学校の給食係として勤め、忠男の世話をしていた孫の春(徳永えり)が廃校により失職して、都会に勤め先を探すため、離して暮らしている忠男の兄弟に祖父を預かってくれるように尋ねて歩く様子から描き始めます。

harutonotabi04.jpg  

忠男は偏屈で、世話をしてくれる春に対しても、色々指図したりしてわがまま放題です。生来の性格もあるのでしょうが、半分は幼児と同じように、春を困らせ、春の忠男に対する気持ちをいつも確認しておきたい気持ちの反映で、甘えの裏返しの表現だろうと思いました。それでも本当に春のことを考えていることは、春が思わず口走った祖父を兄弟に預けると言う提案に乗ったことからも分かります。春を自分の世話から解放して外の世界に出して上げたいと思っていたのです。

harutonotabi03.jpg

二人で兄弟を尋ね歩きますが、実の兄弟でも、過去ずっと疎遠にしており、兄弟それぞれ、自分と家族の色々なのっぴきならない人生を抱えています。さらに、年老いて行動も思いどおりになりません。忠男の長兄(大滝秀治)は「どのつら下げて会いにきた。それがひとにものを頼む態度か」と拒みますが、後で自分達夫婦も息子達に言うとおり生きざるをえず、近いうちに施設に入ることが分かります。旅館を経営する姉(淡島千景)は忠男に「みんなあなたの犠牲者なのよ」と言い、役に立たない忠男は置けない、後継者とするため、春だけを残していけと言いますが、姉として今からでも忠男を一人で生きていくように暗に諭していることが分かります。不動産屋でバブル再来を狙っている弟ともお互いに「バカヤロー」と大喧嘩しますが、二人にホテルのスイートルームを予約して心配りを見せます。兄弟みんな頑固な忠男が突然尋ねてきて行った依頼に対して断りますが、応えることができる立場にあっても、できない境遇でもそれぞれ、異なる方法で忠男の事を考えていることが伝わります。でも、もうどうしようもないのです。老境にある兄弟達が、これが生涯で最後となるであろう訪問で、言葉にならない別れの会話をしているシーンが、演じている老俳優さんの実人生とも重なって心に沁みました。

harutonotabi01.jpg

物語は忠男から次第に春が中心となって進んでいきます。忠男の兄弟との再会を見て、肉親同士が本音で感情をぶつけ合う場面に出合った春は短い時間の中で色々と考えて成長したのでしょう。忠男とずっと生きていく気持ちを固め、さらに、離別した父を尋ねようとします。自分の出自を確かめたいという心情はよく共感できます。父は忠男の娘と結婚しましたが、春が生まれた後離婚し、春の知らない間に再婚しています。春の母親は離婚後、自分を責め自死しています。春は父に対し、「過ちって償えないものなの。人って自分の事しか考えられないものなの」と、永年、心に秘めてきた思いを父にぶちまけます。

harutonotabi02.jpg

映画はシャッター通りとなった地方の商店街、貧困や過疎、老人と介護の問題など現代日本の問題に対して問いているように思います。答えは提示されていません。だれもが春のような肉親を持てるわけではなく、持てたとしても春にも自分の人生があり、また、生活するためには働ける場所を見つけ、収入を得なければなりません。兄弟たちも、やっとのことで生きている状態でした。この生き辛い現実と、どう折り合いをつければよいかを考えてしまいます。私も家業は継がず、大学から都会に出奔し、結局、生涯郷里に戻りませんでした。親の介護も兄弟に頼りきりでした。サラリーマンの宿命とは云え、他の生き方はなかっただろうか、と今でも忸怩たる思いを持っています。


harutonotabi00.jpg




徳永えりさん、「これが最初で最後の対面」と言い切った、父と再会時の般若のような睨み付ける目付や、その後の号泣シーンとともに鬼気迫る熱演でした。フラガールやうた魂でも脇役ながら、それぞれ主役を食ってしまう演技で、若いのに凄い女優さんだと思っていましたが、今回は、仲代達矢さんや、多くの老名優と渡り合ってさらに飛躍した感じでした。メイキングによれば、「1キロ走った演技は仲代さんなら走らなくてもできるが、徳永えりにはまだ無理で、実際に走らないとできない」と監督から、クランクイン前から春になり切るように缶詰にされて指導されたり、撮影中でも一晩海の前に立たせて春の気持ちに沿えるように追い込まれたようです。父との邂逅シーン撮影の後、過呼吸となるほど春として生きていました。

この映画は、映画「パーマネント野ばら」と縁があるようで、気が付いたら同日(2010.5.22)公開で、DVDも同日(2011.01.07)公開でした。

リンク
春との旅公式サイト
上野教授のコメント
うた魂♪の記事(1),(2)


関連記事

テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

この記事に対するコメント


この記事に対するコメントの投稿

















この記事に対するトラックバック

トラックバックURL
→http://77117c.blog118.fc2.com/tb.php/136-a9f4f663
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
カレンダー

最近の記事
FC2カウンター

最近のコメント
カテゴリー
ツイッター

月別アーカイブ

リンク
プロフィール

Groove

Author:Groove
音楽(クラシックと演歌以外)と、映画、PCの日々。古い話を含め、お気に入りを書いていきます。

ブログ内検索

RSSフィード